拝啓、リューンの世界で生きる皆様へ

 

2019年6月、待ちに待った初日の幕が上がり、

そして7月、大好評の中惜しまれつつ大千穐楽の幕を下した、再演『リューン~風の魔法と滅びの剣~』。

 

その作品に登場した、『リューン』の世界で生きていた人たちはどんな人物だったかなぁというのを作品考察に際しいろいろと考えたので、主観100%の全く人物紹介とは言えないようなものだけど残しておこうかな…と思い立ち勢いで書くことにしました。全員について書ければよかったのだけど、私はそこまで器用に観劇できなかったのでリューンについて考えていた時に感じたことが何かある人のみ書いていきます。自由気ままな備忘録です(笑)

 

 

 

  • リューン・フロー

    主人公はフローだと思う

 丈くん、大橋くんのW主演ではあるけれど、私ははじめてリューンを見た時に「これはフローの物語だ」って思った。ファンタジー作品によくある”冒険を通しての主人公の成長”の面を担うのもフローだなって思った。だけど、何か目的のために旅をしてその結果として成長したかと言われるとフローは少し違うような気もしなくはないなと… 

そもそもフローが旅に出た動機って自己から発生したものではなくて「ダイと約束した」からなんだよなぁっていうところにとても特異性を感じる。「身を呈す」ことへの執着、周囲の人はもちろん自分の行動に対しても疑う心を持ち合わせていない怖いくらいのまっすぐさ。その強さは主人公の持つそれだとは思うけれど、フローの成長物語かって言われるとそうじゃないよね~と思ったりもしました。

にこやかな表情で「身を呈してでも」と言ってしまったり、ダイを救うために殺すことを選んだり、ドルデンの魔剣を手に入れる代償として左腕を差し出したり、、、かと思えば最後に自身が滅びの剣に貫かれることを承知でダイに向かって腕を広げたりする…

この共感しがたい選択をするところ、なんならフローの中には選択肢すら存在していなくて当たり前のようにこの行動が一択としてあったのだとしたら本当に「自分の行動を理解していない蜂」だな…と狂気を見ているような気分になってしまいました。

いやぁ~私はとてもフローくんのことが怖くてたまらないし、この怖さの種類は“畏怖“です。とか言ってはいるものの、優しい子だなぁ…とも思っているし、その強さが本当に折れずにここまで育ったのはひとえにルトフの里の人々の温かさと隣にダイ、そしてエルカがいたからなんだろうなとじんわりとした穏やかな気持ちが広がることも確かです。フローくんの存在は光であり救いであって欲しいなと思っています。

 

 

  • ダイス先生/ガンドラ王

  フローに”魔法”という概念を与えた師であり、滅びの剣を生みだした存在。

私は初見の印象が「ダイス先生はずるい」だったのでそこからどうしても穿った見方しかできなくてずっとずるいなぁ~~と思いながら見ていました(笑)

まず、滅びの剣を生み出したのはガンドラ王の弱い心ですよね。民の幸せを願っていたのなら、救ったのが誰であろうと民の幸せを喜びと感じなはれ!って感じなんですけど、やっぱりそれは難しいよね、、、民の幸せを叶えている自分という目に見えない王冠がガンドラ王にとって目に見える王という役割に立つにあたっての見える王冠を被る自信というか根拠になっていたんじゃないかな。

風の魔法使いはどうして物理的な痛みを伴うような罰を与えなかったんでしょうね?いや、不死の呪いが一番しんどいっていうのはまあなんか定石って感じはあるけど…

(これについてはラストのフローとダイが対峙するシーンで風の魔法使いが現れた時にそれらしい台詞はあったと思うんだけど、なんかそれってダイス次第じゃない?そこそんなに主体性持たせる?と思ったような…ごにょごにょ……)

滅びの剣がよみがえった時にダイスは「やっと死ねる」って思ったんじゃなかろうか、本当にダイの事救おうとしてくれていた?という疑問が浮かんでしまったし、「身を呈す」ことにあれだけ固執していたフローからその機会を奪い、1000年の悲願であっただろう死も得ることができたしなんなら自分が生み出してしまった滅びの剣を自らの手で風と共に消すことができた…ってめちゃめちゃ報われてるじゃん!ずるい!元凶のくせに!となってしまうので好きになれませんでした…

ちなみに「本当に救おうとしてくれていた?」というのはドルデンの魔剣の件に違和感があるからなんですけど、これはカーロンの所で書こうと思います。

 

 

  • ダナトリア

  みんな大好き!ダナトリア様!

私はめちゃくちゃ好きでした。一番人間らしいというか共感しやすいなと思ったキャラクター。もちろん非人道的な行動をしてますし、リューンの二人にとっては二度も故郷を奪った宿敵なんですけど…

ダナトリアにとって人を殺すことは「正義」、だけれどそれは残虐な悪魔だと罵られることだってもちろんわかっているし、悪魔になる覚悟をもってその選択をしている。それがめちゃくちゃ人間的だし理屈がわかるなって思って寄り添いたくなってしまいました。(多分寄り添わせてなんかくれないが)

キャスヴィルに向かって「お前は頭がきれる」って言うの、ものすごく印象的で、ありきたりな表現を借りるとダナトリアは「努力と才能」の「努力」の人なんだと思う。敬愛する陛下のためには倫理道徳的には残虐な悪魔となる役割も厭わないし、自分の力量を理解した上で自分にはない部分を持つ部下を評価している。どれもこれも自らの手柄や名声ではなくて陛下にとって良い結果となることを望んでいるようで、ダナトリアと陛下の主従関係はどうやって結ばれたのか興味が湧きました。

ダナトリアの選択に少し疑問な場面があって、おそらく自分のことを頭が良いとは思っていないのであろうダナトリアは賢い方法よりもすべての可能性を”0”にする*1方法を選ぶのではないかと思うんですよね、そこでドルデンの魔剣をフローに渡した/託したのはいつもの選択とは異なるのでは?と考えています。

そして最期、フローに斬りかかるつもりであっただろうダイの剣を迎えに行って刺されるあの選択、どういう心の動きなんだろうなぁ…フローに希望を見たのかなぁ…それともフローの「蜂」としての振る舞いに賭けたのかなぁ…どんな理由であってもあの時にダナトリアにとってフローは取るに足らない小僧でも「せっかくドルデンの魔剣を託したのになんだお前は」でも無くて、己の死に値する人間に見えたのだろうなと感じました。

それでも、ダナトリアがダイに向ける目というか「お前は俺を殺したいのだろう?」という挑発的でいて負けるつもりの無い表情と、15歳のあどけなさの残る顔にまっすぐな復讐を燃やすダイを思い浮かべるとすごくなんか…つらい…………(言葉を探すのを諦めた)

 

  • ファンルン

   きました!ファンルン!

いやさぁ、ファンルンね〜〜〜すごくいいよね!(内容は?)

正直わたし的観劇序盤はファンルンというキャラクターの受け取り方が「全っ然わかんない!わっかんないよぉ!」って感じになってしまってどストレートに「ただのサイコパス?」とも思ったけれど、初演でファンルンを演じた永田崇人くんの少年兵の話もあるようになにか屈折したものがあるキャラクターなんだろうけど…わからない(概念)となっていました。

ただ、観ているこちら側の余裕も生まれてか少しずつ見えてくるものがあって(東京公演あたりからかな?)飄々としているときとぐっと重厚感のあるときのセリフの対比がファンルンの心の内を少し覗ける瞬間のように思いました。

たたらの島を出るときの舟の上での会話で、希望に満ちたことを言ったフローに向けた「そうかな」は表面的なファンルンのキャラクターとしては違和感を持つくらい重たく冷たくて、でもそのあとすぐの「運命はそう簡単に変えられない」は飄々とあけすけな感じで言ったりする。とても好きでした。

 

あとは、ファンルンとダナトリアはどちらも立場上人を殺す役割を持った人として対照的だなとも思っていて、ダナトリアは人を殺すことは悪とわかっていながらその「役割」を正当化させていたけれど、ファンルンは人を殺すという自分の「行動」自体を正当化させるために「人を殺すのが好き」だと言っていそうだなぁと考えていました。まあどちらも「人を殺す」ことを正当化して自分の心を守るためなんじゃないかなって思ってます。

 

 

  • エルカ

   エルカは強くて優しくて勇敢な光。

私はエルカの明るさが理解できなくて、滅びの剣を復活させてしまったのにどうしてここまで明るく振る舞えるのだろう?今からダイを探す(殺す)旅に出るっていうのにどうしてそんなに笑っているの?無邪気がすぎないか???と陽のヒロインに共感することがはちゃめちゃに苦手なせいで終盤まで「かわいいね〜〜お歌上手〜〜」以上のことを考えようとしていなかったことを大反省した。

エコーミュージックを聴いてもいつもは思考停止で歌詞が全然頭に入っていなかった(というかはなから「私にはわからぬ」と考えることをやめていた)せいでエルカの魅力に気がつくのがとても遅くなってしまったのは私のリューン観劇の中での反省ランキング上位に入ります。

あの場でずっとポジティブでいてくれて、ずっとダイを信じていてくれたのはどうしたってエルカだけなんですよね。フローの旅の目的はダイとの約束を守ることにあるけれど、その手段は「ダイを殺すこと」としていて、一方でエルカはダイに「一緒に帰ろう」と変わらず手を差し伸べてくれる。そういられるのはエルカの優しさであり、それを持ち続けられる強さなんだろうなと思います。すきです。

 

  • マーナム

   ここまで結構な熱量で話しているのに対してマーナムに関してはそこまでの話はないんだけど(小声)…ダイにとってマーナムってものすごく大きな存在だろうなっていうのは剣術の師だからだけではなく、マーナムってルトフの里の人間とはまた違った考え方を持っていると思うんですよね。調和を愛する民なことには違いは無くとも剣を持つことを選んでいるのがとても大きい。そしてダイと同じく「魔法」を信じていないというか…

その考え方にダイが影響を受けてああなったのか、それとも元々持っていたダイの考え方にマーナムの存在が師としてはまったからあれだけ尊敬しているのかは鶏か卵かって感じがするのでわからないけれど。

あとはマーナムは外からきた人間なのかなぁとか考えたりもしました。

 

 

  • カーロン

    滅びの剣に対抗することができるドルデンの魔剣を作る鍛治職人

、、、、、私はそもそもここに疑問があるんですが???

いや、だってさ、滅びの剣に対抗できるというのはどうしてわかるの?というところから疑問で、1000年間封印が一度も解かれたことがなかったのだとしたらわかる試しがないし、仮に以前にも封印が解かれたことがあったのだとしてもそれはいつ?誰が?どうやって???となるわけです。

クラートンがドルデンの魔剣に"ほんのまじない程度"の魔法(正確には違うけど)をかけた時のカーロンの驚きぷりったらねぇ!

ただの商売人の謳い文句としての「滅びの剣にもまさるドルデンの魔剣❗️」感が否めないなと個人的には思っています。

 

ただ、現時点で生きている中で滅びの剣に対する知識が最もあるであろうダイスが「滅びの剣に対抗できるドルデンの魔剣」と言っていることが不思議で、もし「所詮たたらの島の謳い文句なんじゃないの?」と思ったとしてもダイスもそう言っているとそこまで適当にあしらうことも気が引ける…とはいえドルデンの魔剣をフローたちに取りに行かせたけれど、自分は結局ドルデンの魔剣ではなく風の魔法使いを探しに行ったということはどうしてでしょう…?「ダイを救う方法はない」って言ってドルデンの魔剣を取りに行かせてフローはそれでダイを殺すつもりなのだろうけれど、ダイスは風の魔法使いを探してどうしてもらうつもりだったんでしょうね?(恨みつらみ)

 

  • リューン・ダイ

    平和を守るため、愛する人を守るために磨いた腕と心が故に滅びの剣を掴んでしまったひと。

魔法に対するスタンスはフローと対照的で魔法の存在に否定的というよりは取り留めのないもの、特に気にするものでも力のあるものでもないと思っているんじゃないかな。

それはきっとダイにとって力が「実体のあるもの」に定義されているからなのかなぁと考えています。それでいくと滅びの剣もはじめは実体が無いもので、封印が解かれる前から興味を持っている、それについては「ルトフの里」の人間ではなく「外」の人間であるファンルンがその存在を信じていることによって少し意識が向けられたのではないかな?というのと、そもそも「滅びの剣」自体になにか人を惹きつける引力が働いているんじゃなかろうかと考えています。滅びの剣が蘇った後のファランディーアの泉で、エルカが狼狽えているにも関わらず魅入られたように滅びの剣に吸い込まれていく様子は一種の妖力に当てられているかのように見えました。

たしかにフローとは違ってダナトリア(カダ王国)に対する復讐の炎はずっと彼の中にあったのかもしれない、本人は気付いていなかったのかもしれないし(私はそうであったと願いたい)、その炎は「里を/大切な人を守る」原動力にもなっていたんじゃないかな。

けれど一方でその炎が滅びの剣に引き込まれた要因なのだろうなぁとも思います。

黒い獣に抵抗していたのに飲み込まれていく様子は、何かしら彼にも黒い獣の言葉が響いてしまう部分があったのだろうなと少し悲しいというか寂しいというか…やるせない気持ちになりました。

結果的には滅びの剣を手にしてしまったし、たくさんの人を殺し「復讐」という連鎖の中に入ってしまったことは大きな罪であり間違いだとも思う。それでも罪に対する救いはなくとも彼の心に何かしらの救いや折り合いがつけられる時がきてくれたらな、と願っているし、拠り所としてルトフの里があればいいな。

 

 

 

つらつらとここまで書いてきたけれど、着地点はどこにもないただの備忘録でした!

また改めて考察もするだろうし、もっとラフな「リューン最高!大好き!ちゅっちゅ😘」って話もするだろうしリューンについては「わかったから落ち着いて……」って言われても擦り続けるかと(笑)

(リューンの話しましょうね!)(圧)(真面目な話、8月中にはリューンのこと一旦全てまとめたいし、私は早く卒論やろうねぇ〜という状況です)

 

おおはしくんからの命を受けて、10年、100年、、、いや、1000年!リューンは最高だったなぁ!と語り続けていきたいなと思います!目指せ!風の魔法使い!

 

 

*1:1.魔王の力を持つ存在がいるかもしれないリューン一族の”皆殺し” 2.ルトフの里に伝わる実在するか確証のない滅びの剣とその伝説ごと消滅させるためのルトフの里襲撃